康熙47年10月 日-『書簡和觧698』-20220211

2021年11月19令和3年11月19


琉球國中山王尚 進貢の事の爲にす。
切にてらしみるに、
幣国は海壌海が赤く染まった土にくに僻居居住的住所し世々天朝の隆恩大きなめぐみけ、貢典進貢のきまり遵依したがいって、貮年に壱貢すること欽遵まもりしたがひて案に(註1)在り。
調べるに、康熙四十七年は進貢の期に當るべし。時に、耳目官向英・正議大夫毛文哲・都通事陳基湘等を遣はし、海船貮隻に座駕り、煎熟硫黄壱萬貮千陸百觔、紅銅参千、練熟百鋼壹千觔を分けて載せて、福建等處承宣布政司にすすみ至らしめて投納せしむ。こうらくは、とりついで、詳文を差し出して督撫兩院をして題明題奏して明らかにする若しくは 題本にて明らかにする(註2)せしめて陪臣の向英等をして表文方物を齎捧もたらしささげ、京に赴き叩して聖禧天子の幸福を祝せしむるを爲されんこをとのほかに、所有くだんの原船貮隻については、ほ乞ふらくは、貴司の歴貢事例これまでの進貢事例査明調べあきらかにするに其の員役をって、来歳の夏至の早汛初期の洪水(註3)に於いて、速やかに本国に摘回選んで取り出し元にかえす(註4)するを賜はりたるをゆるす(註4-➀)されり。
末員小官員(註5)の海上の驚涛さかまくの大波(註6)に至らざるは、皆な貴司再生之徳貴司の復活の美徳(註7)に出ずる者なり。
尚貞海陬海に面したいなかの地(註8)僻處へんぴなところ。僻地(註9)つとに貴司福建等處承宣布政司(註10)清廉心が清らかで私欲がないこと(註11)恵愛慈しみ愛すること(註12)遐邇遠い近い沾恩うるおいの恩を仰ぐなり。
奈何いかんせん、万里の波涛、おもむくに由る無く、教誨おしえくるも、だに引きれるのみなれば、私をおそるるならん。
ここの者にして、入京末員小官員(註5)は恐らくは、事を任すに堪へらん。
すべて貴司に祈るのみ。始終はじめから終わりまで照佛世話すること感佩有り難く感じて忘れないぞよ、なんきめんめんかな。
此れが爲め理として貴司福建等處承宣布政司に移咨すらば煩爲ねがはく査照承知する(註13)くせられ施行とりはからわ(註14)せられんことを。須からく咨する者に至るべし。(註15)

右は福建等處承宣布政司に咨す。

康熙肆拾柒年七年十月  日


『書簡和觧698』-20220211
『歴代宝案1636-20211119』


註1 在案
○「所謂在案とは或ル事件 二關シテ先例ノ紀録二
存スルモノアリトノ意ナリ」
○公文書二用フル語 ニシテ手續ヲ了セリノ意。又
○御承知ノ筈ナリトノ意。
題明(註2)
註2 題明 題奏して明らかにする。(『歴代宝案』訳注本1・2冊 語注一覧表) 若しくは 題本にて明らかにする(後半はagijimaの考察)
➀題知=題本もてお知らせ申し上げます(『無用之用』)
⓶明=明瞭 明白(web検索)
➂あきらか。あきらかにする。「明確」「証明」 (web検索)
➀から⓷から題明は題本にて明らかにすると解した(agijimaの考察)
(註3)早汛 初期の洪水(『Google譒訳』)
(註4)摘回 選んで取り出し元にかえす。選抜してかえす(agijima考察)
摘 選んで取り出す
回 3 元の状態に戻る。戻す。かえす。
(註4-➀)准 ゆるす。承認する。「批准」(web検索)
(註5)末員 小官員(『Google譒訳』)
(註6)驚涛 さかまくの大波
(註7)貴司再生之徳 貴司の復活の美徳
陛下再生之徳=陛下の子孫の復活
皇上天地再生之徳=皇帝の天と地の高潔な大臣の復活
皆陛下再生之徳=陛下の生まれ変わった美徳
➀KR2f0021 胡端敏奏議-明-胡世寧, 8, 4a 之年皆陛下再生之徳也子孫世世其何能報臣以
➀KR2f0021 HuDuanminの発言-Ming-HuShining、8、4a年は陛下の子孫の復活です
⓶KR4e0196 具茨詩集-明-王立道, 10, 24b 即皇上天地再生之徳也臣不勝惶懼哀懇之至為
⓶KR4e0196 Kuci-Ming-Wang Lidaoによる詩集、10、24b皇帝の天と地の高潔な大臣の復活は、非常に恐れと悲しみに満ちています。
KR2f0021 胡端敏奏議-明-胡世寧, 6, 12a 之年皆陛下再生之徳而此二臣中有能盡忠補報
KR2f0021 HuDuanminの発言-Ming-HuShining、9、5b年、陛下の生まれ変わった美徳は不滅であり、大臣は個人的な愛に疲れ果てていると本当に感じています
(註8) 海陬 (「陬」は隅、辺地の意) 海辺にある片いなか。海に面した、いなかの地。海隅(かいぐう)。(web検索)
(註9) 僻處 へんぴなところ。僻地
(註10)貴司 福建等處承宣布政司
(註11)清廉 心が清らかで私欲がないこと(web検索)
(註12)恵愛 慈しみ愛すること(web検索)
(註13)査照 承知する(『無用之用』)
(註14)施行 とりはからひ
須 当然。なすべきこととして。
(註15)須至咨者 当然宛先の者に至るべきである
須至 当然・・・・に至るべきである
咨者 宛先に 咨する者(上記の・・・に該当)
宛先の宛名は右は・・・・咨すの・・・・に当たる。
右は・・・・に咨す
つまりこの例では、琉球國王が須至咨者として咨者に当たるのが福建巡撫印務布政司となり、
右の咨文は福建巡撫印務布政司に宛名のもとに書いたた咨文ですよ、という意味になる。


琉球國中山王尚 爲進貢事。

幣国僻海壌天朝隆恩け、遵依貢典、貮年壱貢欽遵在
康熙肆拾柒年當貢之期。特遣耳目官向英・正議大夫毛文哲・都通事陳基湘等、座駕海船貮隻、分載煎熟硫黄壱萬貮千陸百觔、紅銅参千、練熟百鋼壹千觔、至福建等處承宣布政司投納。乞爲督撫兩院題明令陪臣向英等齎捧表文方物、赴京叩祝聖禧所有原船貮隻、乞、貴司査明歴貢事例其の員役、准於来歳夏至早汛、速賜摘回本国。
不至末員海上驚涛、皆出貴司再生之徳者也。
貞、僻處海陬、夙仰貴司清廉な恵愛、遐邇沾恩
奈何、萬里の波濤、無由教誨深引私。
者、入京末員恐弗堪任事
統祈貴司。始終照佛感佩
爲此理合移咨貴司煩爲、査照施行。須至咨者。

右       咨

福建等處承宣布政司。

康熙肆拾柒年七年十月  日

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